ヒマラヤ山系を越えてゆく鶴

4月11日
鐘楼と桜
 昨日のお葬式は、戦後開拓営団として小俣町に入られ、87歳で往生されたお婆さんのお葬式でした。その方のお戒名として、私は鶴という字を含めた戒名を授与しました。
 そして戒名をもりこんだ餞別の一句として「輝ける木の芽の山も越え往けり」と詠みました。
 ここには、戒名に選んだ鶴がヒマラヤ山系を越えてゆくイメージが重なり、開拓をした里山の木の芽が芽吹く頃に、その山を越え、ヒマラヤ山系を越え往生されました…と詠みたかったのです。
 といいますのは、1993年の1月4日にNHKで報道された「世界の屋根・ネパール」において、ヒマラヤ山系を越えてゆくアネハヅルの群れの映像がありました。
 鶴は何千・何万という群れとなって、たった数日間だけしか吹かないという上昇気流を捉えて、9000メートルの上空に巻きあがり、みごとな隊列を組んで、その年にシベリアで生まれた雛鳥も隊列に入れ、越冬地のインドに向かってヒマラヤを越えていくのです。先頭を飛ぶリーダーの鶴を後ろの鶴が励ますように鳴き交わします。お念仏を称え、称えしながらみんなで力を合わせて、誰をも落伍させることなく向こうに連れて行ってやるとヒマラヤを越えてゆくのです。リーダーの鶴が疲れると後ろに下がります。するとまた別の鶴がリーダーとなって飛ぶのです。カメラがとらえたその姿の懸命さとけなげな息遣いは、こちらにまで伝わってくるような感動でした。
 魂もこうした崇高な旅をするのかもしれない…と一瞬、思ったのです。
 先年逝った茨木のり子の詩集「よりかからず」の中に「鶴」があります。この詩も茨木のり子がNHk「世界の屋根・ネパール」を観て創作した詩です。彼女は最後のところでこのように詠います。

「…わたしのなかにわずかに残る
澄んだものが 
はげしく反応して さざなみ立つ
今も
目をつむれば
まなかいを飛ぶ
アネハヅルの無垢ないのちの
無数のきらめき」
  

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